もし家族が認知症になったら…行方不明を防ぐためにすぐやるべきこと

日本人にとって、国民的な病のひとつとなっている認知症。
2014年の放送後、たちまち大反響を呼んだ「認知症行方不明者1万人~知られざる徘徊の実態~」(NHKスペシャル)を書籍化した『認知症・行方不明者1万人の衝撃』は、認知症を原因とする徘徊、失踪の問題に深くメスを入れたノンフィクションだ。超高齢社会を迎えたいま、誰もが当事者になりうるこの問題。本書を読んで、その実態と解決策をぜひ知っていただきたいと思う。

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身元が分かるよう衣服に名札をつける

衣服に名札をつけておけば、保護されたときに身元が分かり、すぐに連絡が取れます。名札には、氏名、住所、電話番号を記しておきます。電話番号は、家族のものと家族が不在のときに連絡がつくものを二つ書いておくとよいでしょう。名札をつける場合は、服の内側やえりの裏など目立たない所にします。

(写真:iStock.com/Oleg Elkov)

また自治体によっては、名札として機能するものを配布している場合もあります。

東京都大田区で進めているのが「高齢者見守りキーホルダー事業」。緊急連絡先や病気などの情報を事前に登録すると、番号が入ったキーホルダーを受け取れます。

そこに地域包括支援センター(市区町村によって、分かりやすい様々な名称がつけられていますが、介護のよろず相談を受け付けている所)の電話番号などが書かれていて、連絡すると身元が分かる仕組みです。書かれているのは登録番号のみなので、名前や電話番号などの個人情報も保護されます。

栃木県壬生町では、アルミ製のネックレス「命のカプセル」を配布しています。中には、名前や住所、緊急時の連絡先などを記入する紙が入っており、携帯しやすいよう首にかけられるようになっています。いざというときはこれを開けてもらい、迅速な対応に結びつけてもらうのです。

お住まいの自治体でこうしたものを配布しているか問い合わせをしていただき、もしあれば、それを活用するとよいでしょう。

GPSによる位置情報端末を活用

GPS端末を本人に持っていてもらえれば、すぐに位置を検索できるため非常に有効です。本人が持ち歩きたがらず置いていってしまうことも少なくないため、有効性に疑問を唱える介護関係者も多いのですが、私たちが取材した限りでは、これを持っていて行方不明となり、見つからずに死亡した人は、ほとんどいません。

(写真:iStock.com/george tsartsianidis)

確かに持っていきたがらない場合も少なくありませんが、お気に入りのバッグに入れるなど、工夫して持ち歩いてもらえれば、大きな安心感を得られます

大手セキュリティ会社以外でも、GPS端末のサービスは次々と始まっていて、より小型のものも出始めています。前述したように靴に装着するものも開発が進んでいます。

課題は、費用です。加入料と月々の利用料金がかかるため、経済的に一定の負担が必要となります。今のところ、GPS端末の利用は介護保険の適用外ですが、自治体によっては独自に機器の貸し出しや費用の補助を行っている所もあります。お住まいの自治体へ問い合わせをしてみてください。

なお、介護する人が高齢者の場合、使用方法が難しく使いこなせないという指摘もありますが、その場合はほかの家族が手助けすればいいはずです。高齢でも丁寧に説明すれば使い方が分かる方も多く、頭から無理と決めつける必要は、ありません。

一度使ってみて、もしうまくいかない場合は使用をやめればよいのではないでしょうか。GPS端末は、本人が持ち歩き、かつ家族も使用法が分かるのであれば、一定の費用はかかるものの、有効な対策の一つになりうると、改めて強調しておきたいと思います。

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