傷の治療促すたんぱく質で治験 カイコたんぱく質を利用

化学メーカーの三洋化成工業京都市)と京都大学は9日、糖尿病や床ずれによる治りにくい傷に、スポンジ状のたんぱく質「シルクエラスチン」を貼って治療する臨床研究(治験)を始めたと発表した。治験は医療器具の販売に必要な手続きで、有効性を確かめた上で、2023年度にも販売開始をめざす。

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 治験は7月から11月を予定。対象は、糖尿病や床ずれによる傷があり、従来の治療法が効かない患者20人と、重い外傷ややけどの患者5人だ。傷に2週間貼って効果を調べる。

 京大の森本尚樹教授(形成外科)によると糖尿病や床ずれの影響で血流が悪くなると、皮膚が炎症を起こし、えぐれて傷ができることがある。こうした傷は治りにくく、糖尿病では年間3千~5千人が足の切断に至る。傷を覆ったり、人工真皮を貼ったりする治療法もあるが、細菌に感染しやすくなるといった難点があった。

 そこで、カイコがつくるたんぱく質と、皮膚の成分を人工的に組み合わせてシルクエラスチンを開発した。スポンジ状に加工して傷口に埋め込むと、細菌の侵入をブロックし、皮膚を再生する細胞が集まる足場となって治癒を促す。

 森本教授は「糖尿病だけでも数万人以上が治療の対象となりうる」と話している。(野中良祐

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